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2012.01.28 出られない
高校生の時、俺は腸が弱かった。
ゆえに、学校に行く時は少し早く出て、途中の汚い公衆便所で用を足す事が多かった。
その公衆便所は駅を降りて、通学路からは少し外れた森(と呼べるのか分からないが)の中にある。
そして、必ず一番手前のドアが閉まっていた。

無論その中にはいつも、ちゃんとした「人間」がいるのは知っていた。
くしゃみや咳、新聞を広げる音などがしていたからだ。
しかし、それを気にしている暇もなく、学校に遅れないように、大量の○ンコをすることで精一杯だった。

いつも同じ場所で、俺が行った時にいつも用を足している人間がいる事をまだその時は不自然には思わなかった。
ま、そういう奴もいるだろう、と思っていた。

俺が朝、家を出て、電車の中で腹が痛くなり、その公衆便所で用を足し、学校へ行く。
そんなサイクルも一年以上続いた高校二年のある日、やはり俺は朝、腹が痛くなり、例の便所へ駆け込んだ。
そしていつものように閉まっている手前の個室を通り過ぎ、用を足し終わった。
その時、その個室から声がした。


「いいですね・・・いつもお腹の調子良さそうで」

学生、とは言えないが、若そうな声。
一年以上俺と同じタイミングで用を足していた、そいつの声を初めて聞いた。
だが「いつも」とはどういう事か?
とりあえず、「え、あ、まあ・・・」とぐらいしか返事を返せなかった。
そして次に奴が言った、不気味な言葉。


「私なんかね、もうね、ずっとお腹の調子悪いんですよ。ほんとに。
出てないんですよ、ずっと。私ねこの場所から全然出てないんですよ。
ほんとに。お腹の調子、悪いからね、出れないんですよ。」


手を洗いたかったが、これ以上ない寒気に負け、学校で洗うと決め、早足でその場を出た。心臓がバクバクと鳴っていた。
後ろを振り向く事は絶対に出来なかった。

「いつも」という言葉。
個室から出ていないのに、なぜ俺が「いつも」用を足している事を知っているのか。

そして、「この場所からずっと出ていない」という言葉。
一年以上、奴はずっとあの場所に居たのか・・・?

考えれば考えるほど、訳が分からなくなった。
その日からはいくら腹が痛くても我慢して学校まで耐えるか、遅刻覚悟で家で用を足して行くかにした。
奴が人間だったのか、分からないが、これほどに不気味なことは無かった。



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